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社長 細田雅春より

代表取締役社長

弊社代表取締役社長・細田雅春の取材記事や発表した文章などを随時掲載しております。

これからの高性能ビルと都市的開発のあり方を考える
防災都市構想に向けた建築・都市一体構想

東日本震災を機に、都市や建築の防災機能をいままでよりも高度化したものにしていく機運が高まる一方で、国も地域住民が津波から逃げるための『津波避難ビル』の整備に乗り出し始めている。大都市においては、交通機関や道路、エネルギーなどの切断がパニックを引き起こすことになるが、地方においては、何よりも災害に強い建築の強化が喫緊の課題であり、とりわけ、津波による脅威に対して、避難経路や場所を確保することの提案が優先されている。

特に、大都市の高層・高性能ビルにおいては臨海部を除き、津波の脅威を基本的には想定していないが、大地震に対しては、耐震性を優先させ、セキュリティーや快適性に配慮した自己完結型の高性能化の推進に関心が集まっている。災害に際しても、その路線を軌道修正することなく、自家発電設備の強化や蓄電池の整備などを含めてさらに高性能化を促進させようとしている。性能アップというこのこと自体にはまったく異論はないのだが、都市と建築の関係を考えた場合に、都市の主要な建築が単に自己完結性を推進させることが、果たして、都市防災を強化することになるのだろうか。つまり、自己完結とは、自らは最高のレベルで、安全と快適性、利便性は確保されるが、部外者や不審物はすべて排除されるという仕組みなのである。

つまり、自己完結性の高いビルにいることは、外にいる人は危険でも、ビルの中にいる人のみが安全だということになる。セキュリティーを高めることは部外者(外部)を拒否することである。

この問題の奥深さは、建築の進化と都市の進化とがますます乖離し始めている現実にあり、進化し続ける自己完結型建築のあり方と、都市防災の解決との間に深い溝があることを指摘しなければならないからである。高度化された建築が本来『避難ビル』として都市の中で有効に機能することが検証できるのか。ますます高度化して自己完結で閉じた方向に向かう高機能ビルと、多くの不特定多数の部外者の避難や救済に向けた開放性をどのように結びつけるのか、議論の展開を待ちたいところである。例えば避難のための屋外階段や避難タワーの設置という単一な提案に止まらないことを期待したい。たとえ屋外階段を設置したにしても、管理や不特定多数の部外者の無作為な利用には、たぶんに否定的な意見が出てくるに違いないからである。

都市と建築の一体的運用という提案が、防災都市としての「安全・安心・快適性」を担保させるためには、不可欠であることを指摘したい。区画整理された場所での用途や容積を守った自己完結に向けた建築の一方的進化は、都市連携を図った、都市に開かれた広場や共有された屋上広場、階段などの構想とは異なり、優れた建築を目指す方向とは、必ずしも一致しないからである。建築の連帯性とも言うべき方向は、都市防災だけを考えても不可避なテーマであることは間違いないことだろう。一つひとつの建築の良し悪しではなく、その結びつきの中に連帯性と公共性を結びつけた『都市型建築』を目指さなければ、本来の開かれた建築も都市もできるはずがない。本来の都市再開発とはそのような大義名分があってはじめて成り立ったはずなのであるが、現在の再開発は、それが法定(再開発)案件であっても、公共性の部分が極めて貧弱な場合が多く、低層部の多少の公開空地や公共施設で説明するという補足的手法に過ぎない。

今回の津波対策の一環として『避難ビル構想』の方向性は正しいが、そうした個別的建築の発想ではなく、新しい法的枠組みをつくり、官民を問わず、建築が相互に連携し、街区を越えて立体的に連携を生み出す仕組みづくりが必要なのだ。そういった建築が集合することによって、多くの公共的外部性が担保され、そこに屋上や高台の広場を設定することで、避難場所としても提供でき、日常的には豊かなコミュニティー形成に寄与する場としての役割を果たすことが重要なのである。そして高性能化された個別のビルが、自己の能力を、いかに公共に提供できるかも重要である。とりわけ、東日本の壊滅した場所の復興計画には、超法規的枠組みを前提とした『都市と建築の連携が最大限発揮されるまちづくり』を強く提案したい。つまり、個別の一つひとつの建築ではなく、いかにして建築・都市の一体的構想の中に公共性を担保していくか、そして特定の人だけの権利を主張するのではなく、防災都市づくりに向けて、その構想をいかに開いていくかが大切なのである。

それは、いままでの建築を軸においた都市開発の手法によらない、東日本から始まる独自のまちづくりと建築のあり方を考えていく契機となるのではないだろうか。

日刊建設通信新聞
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