会社案内

社長 細田雅春より

代表取締役社長

弊社代表取締役社長・細田雅春の取材記事や発表した文章などを随時掲載しております。

巨大災害、我々の使命
新グランドデザインの提示を 破局の文脈の連鎖を断ち切ろう

東北地方への未曾有の大地震に始まった今回の巨大災害は、大津波、大火災、そして原発事故による電力供給不足、さらには放射能汚染の恐れといった四重、五重の災害が重なり、最悪の事態に陥りつつある。加えて、首都圏の計画停電による混乱や、メディアの報道による風評被害などの影響が出始め、情報の断片化やマネジメント能力の欠如による情報発信の不能が、国民に不安を与えている。このような未曾有の連鎖型巨大災害が起こった原因について、その因果関係と問題点を指摘し検証することの必要性は言うまでもない。

禁句にすべき「予想を超えた」

しかしながら、今回の災害で言われ続けている「予測を超えた災害」というフレーズこそまさしく禁句とすべきではないか。災害とは常に予測を凌駕して起こるものであって、だからこそ災害が発生するのである。そして、その連鎖する災害の予測を超える文脈に対して、どのようなセルフエイド機構を組み入れた社会にするかが、複雑化している現代社会に課せられた課題ではないのか。

現代社会がすべての最先端にあるといえるかどうか定かではないが、少なくとも現代社会には、人類の未来を切り開いて、現在よりもさらに豊かな社会を生み出していく使命があることは言うまでもない。そしてその目的を達成するためには、まず「安心・安全そして快適な社会(体質)」をつくり、維持し続けることが必要不可欠である。それ故に、この経験を活かして明日が見えるような復興が行われなくてはならない。ただ震災以前の状態に立ち戻るだけでは断じてダメなのだ。

「安心・安全そして快適な社会」という文脈づくりがどれほど重要かということが、今回の災害でだれの身にも染みたと思うが、その社会の構築・文脈づくりについての議論こそがこれからの最大のテーマとなっていくのは必然だろう。

なぜならば、現代社会の複雑さを解く文脈の発見には、さまざまな価値の連鎖による別の文脈の読み解きが不可欠であるように、破綻(欠陥)の連鎖による新たな破局の文脈を読み解いて仮説を想定することが不可欠だからだ。そして、その破局の文脈の連鎖を断ち切ることが必要になるのだ。だからこそ、今回の災害に限らず、常に新しい経験や知見を踏まえてセルフエイド・システムを更新し続けることが極めて重要になるはずだ。

セルフエイド内臓の「安心・安全・快適な社会」

ここのようなセルフエイド・システムを内蔵した「安心・安全・快適な社会」の未来(ビジョン)を描くためには、単に未来に寄与する個別な発明・発見はあっても、それだけでは不足であることが、今回の災害でよりはっきりしたのではなかろうか。

一つの優れたアイデアだけではなく、より多くの事象に対応できるシステムが成り立つかという検証と予測不可能性を組み込んだシステムの構築が不可欠なのである。それは単に高度な技術に裏付けられた組み合わせというより、むしろプリミティブな自然の地勢的環境を取り入れたプログラムや、科学的に分析された高度なデータに裏付けられたアイデア、そして、さまざまな経験知とでも言うべき洗練されたアイデアとの相乗効果を前提に、破綻の連鎖を断ち切る複雑難解なプログラムをつくるということである。

例えば、それによれば、原子力発電所はその危険度の高さから消去されることになるのか、あるいはそれを受け入れるべきなのか。放射能からの安全性を担保するためのさらなる装置を、高度な技術革新を持って造り出せばよいのか。それとも何があっても被曝を受けない環境を確保すればよいのか。そこまでして原子力の方向を追尾するのか。あるいは、効率のリスクはあっても、クリーン・エネルギーの活用を前面に打ち出すことになるのか。いままでのようなエネルギーの大量消費社会は後退していくことになるのか。

言うまでもないことだが、いかなるセルフエイド・システムも経済の枠組みに左右される。例えば、昨今の計画停電に伴い、節電が奨励されているが、「快適」の指標がこれまでのエネルギー消費に基づくものであるならば、現状を直視し、快適という概念それ自体の再解釈も求められるだろう。とりわけ、経済的対価という概念の再定義さえ必要になるのではないか。

もちろん、原発を推進させた経済的契機以上に、より広く長期的な視点が求められるのは必然となる。その他にも、さまざまな仮説や文脈が用意されよう。議論は拡散して、収斂することがないかもしれない。しかしながら、そうした議論のベースとしての最大公約数的な経済的指標に基づくセルフエイド・システムの欠落に気づいたことこそが、今回の災害の最大の教訓だったのではないか。

社会システム全体を再構築する決意

現代社会の進むべき進路について、闇雲に前進だけを促すだけではなく、いまこそ、国家を挙げてそのビジョンとビジョン達成のための構図を示さねばならない。当然、現在の産業構造のあり方も問われることになる。われわれが構築してきた生産システム、エネルギー政策などを含めた、社会システム全体を新たに再構築するほどの決意と熱情が必要になるだろう。

この経験を活かし、先導的に新たな日本のグランドデザインを示すことが、われわれ建築家に課せられた重い使命であり、社会貢献の道でもある。出来るか。

日刊建設通信新聞
 2011年4月1日掲載
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2016年年頭訓示「責任の強い自覚を・建築家奮起の一年」
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2011年4月1日
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