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社長 細田雅春より

代表取締役社長

弊社代表取締役社長・細田雅春の取材記事や発表した文章などを随時掲載しております。

リアリティー取り戻すべき
自然の文脈考え直す

東日本大震災の発生から8カ月が経過したが、被災地の生活復興、都市復興の方向性は明確に見えていない。佐藤総合計画の細田雅春社長は、震災直後から本紙への寄稿を通じ、建築分野だけにとらわれない幅広い視点で復興に向けた問題点を指摘してきた。これまでの提言を振り返るとともに、今後の復興のあり方、解決すべき課題について聞いた。

「予想を超えた」「想定外」という表現は使うべきではないということを、震災直後から強く言っていた

「科学で世界の先端を走っていると思っていた日本が、原始的な自然災害によって壊滅的な被害を受けたことが信じられなかった。マグニチュード9・0の大地震は、まったく予見できなかったわけではなく、防御するシステムは構築できたはずなのに、大きな被害を出してしまった。日本の科学技術とはいったい何だったのか、という思いが残る」

「日本は、地球上の陸地の0・25%しかない国土に、世界で起こるマグニチュード6以上の地震の20%以上が集中する大変な地震国である。一方、歴史的にみれば地震と地震の間に発展してきたといえる。災害のたびに英知を結集し、乗り越えてきた。都市が自然災害と密着し、災害とともに成長してきたにもかかわらず、これほど壊滅的な被害を受けたことは信じられない」

日本の社会システムはどう変わっていくのか

「日本は戦後、何もないところから国民が一つになって工業化を進め、経済大国になった。しかし、成熟社会になるにつれ良い意味でも悪い意味でも価値観が多様化し、国としての方向が定まらなくなった。そこにグローバル化の網がかかったことで、日本の立ち位置がまったく見えなくなってしまった。また同時に、世界もグローバル化という流れの中で真実が見えなくなりつつある」

「震災は、あらためて”国家”というものを考え直すきっかけとなったのではないか。”国家”の基軸は何なのか、揺るぎない国家像とは何なのかを考えなければならない」

震災により、自然の文脈を読み解くことの重要性が浮き彫りとなった

「われわれを取り巻くすべてのものは、自然に立脚している。科学技術を用いて、自然を無視した人工的な開発に傾きすぎたこれまでの社会を省みて、自然に対する畏敬の念をもう一度思い出すべきではないか。それは、自然の文脈を考え直すことと同義語だと思う。科学技術も自然に立脚したものなのだが、自然からの遊離が肥大化している。科学技術のための科学技術ではなく、足元をしっかりと見据え、地に足をつけた科学技術を考える必要がある。これは、”国家”を考えることと同義である」

「いまは、抽象的な概念の上にすべてが成り立っている。地に足のついた世界観、ひと言でいえばリアリティーを取り戻さなければならない。一方、世界的に”虚構経済”が肥大化し、現実とのギャップは広がっている。社会は経済抜きには動くことはできないが、あまりに経済に寄りすぎるとリアリティーが薄れる。ここでも、もう少し地に足をつけた生活を考えなければならない。何が現実なのか分からなくなる中で、”常に悩み続けること”が、リアルと向き合う方法の一つとなる」

実際に被災地に行って感じたことは

「少し内陸にあって津波被害を受けなかった自治体が、津波被害を受けた地域を後方支援するための体制を整えていたが、被災自治体はその取り組みをまったく認識していなかった。隣の地域でさえ、被害を受けなかった人と直接被害を受けた人の思いは異なるのだから、東京に住むわれわれが、被災地の直接の感情を汲むことは困難を伴う」

「いま、国会で話されていることの大半は、被災地を体験していない人の意見だ。平地から高台への移転というのは理屈としては簡単だが、被災者は今日、明日をどう生き抜くかという切迫した問題を抱えている。現実的な”今”の問題の解決とビジョンを同時に進めなければならない」

「ただ、全体の復興計画を考えたとき、個々の思いをどこまで反映できるのかというもどかしさを感じる。さらに、さまざまな考えを持つ人がいるため、単純な理論では説き伏せられないことが困難に拍車をかけている。今回の復興は、だれもが同じスタート地点に立っていた戦後復興とは違う」

どのような建築・まちづくりが求められているのか

「災害に対しては単発的な解決策ではなく、建築と都市が有機的に結びつき、全体として防災につながるような動きを考える必要がある。たとえば、津波避難ビル。有事には単に屋上に逃げるだけなのか、不特定多数が避難してきた場合はどうするのかなど、通常のビルが持つ機能にとどまらない高度な都市の問題を解決するプログラムが不可欠となる。単純に高台に移転したり、丈夫なビルを建てたりするだけでなく、人間の英知、技術を駆使して複雑な問題に挑まなければならない。すなわち、従来の計画論では考慮していなかったプログラムを、どのようにして取り込むかという問題だ。それは、例えば個人の思いや”いま”という時間に対する捉え方など、多様な個別のニーズが含まれる。これらのいわば未知の部分も組み込んでいけるような、まったく新たな計画論が必要になるだろう」

「実際に、佐藤総合計画として宮城県気仙沼市で復興まちづくりを提案している。たんなる高台移転ではなく、漁港を生かしながらそこに暮らす人が一体となって生活できるような計画だ」

建築という点だけでなく、線、面へと提案が広がっている

「いままでと同じ東北の姿を描いても現実的ではない。これからの少子高齢化社会に合うような、新しい都市ビジョンを描かなければならない。私が土木分野であるインフラについて考えているのも、建築だけで新しい都市ビジョンは描けないからだ。人間に骨がなければ生きていけないのと同じように、都市も道路などのインフラという骨組みがしっかりしていなければ存在できない。ビル、公共インフラともにいままでと同じような運用をしていても持続できない。価値観の変化を認識する必要がある」

「今回の震災を踏まえて、日本の建築界が背負う責任は少なくない。私の意見は決して学術的に検証され、まったく間違いがないものではない。しかし、鋭利に感覚を研ぎ澄ませ、正しい情報をキャッチして状況を見極めることがいまの建築家に必要なことではないだろうか」

日刊建設通信新聞
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