会社案内

社長 細田雅春より


弊社代表取締役社長・細田雅春の取材記事や発表した文章などを随時掲載しております。
シリーズ 建築設計事務所 問われる真価
「自覚と研鑽」深化目指す 社会にフィロソフィー伝える
「日本は人口減少、高齢化社会、政治力の低下という問題によって将来の見通しを失い始めている」と佐藤総合計画の細田雅春社長は語る。「社会が彷徨(ほうこう)するかのように変化する中で、どうやって豊かな人間環境を担保できる成熟社会を構築するか」が重要だと指摘し、それにはいくつかの条件があるとする。
人材教育を通じて国際社会と協調できる国家の仕組みを構築すること、そしてグローバル企業の育成、次に国内消費の拡大とコンパクトシティー構想の早期実現だ。
建築界も、問題意識を持った対処が不可欠とする一方、建築設計事務所がガバナンスを失い「状況に対応するためだけにいろいろなことをやり、何を目指しているのかが分からなくなっている」ために、すべてが表層的になってしまっていると危機感を募らせる。
そのため、建築界として確固としたフィロソフィー(哲学)に支えられた設計という行為の「深化」を図らなければならないと語る。「(最近では)設計業務の分野も領域が広がり、さまざまな設計行為が日常化し始めている。しかし、単に社会の動きに翻弄されて分散化するのではなく、設計の深化を目指す方向に進まなければならない」と強調する。
設計を「深化」させる前提として挙げるのは、建設産業の近代化だ。生産現場でのロボット化、プレハブ化、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)導入といった生産システムの合理化に加え、設計、施工、維持管理までトータルにマネジメントする仕組みの構築を急ぐ。PFI、DB(デザインビルド)、CM(コンストラクション・マネジメント)、ECI(アーリー・コントラクター・インボルブメント)方式など多様な発注方式に注目が集まっている中、「個別のメリットはあるが、建築生産の一貫的責任と完成した建築に生じた問題を見届けられるのは設計者だけ」と力を込める。
一方、本格運用が始まった改正品確法については、「設計の合理化には触れているが、内容の重要性には触れていない」と指摘し、「設計とは基本設計がコンセプト、実施設計で具体的方向、確認申請により法的根拠が生まれて実現する。その基本的な枠組みが欠落しては設計の一貫的責任が分散してしまう」と危惧(きぐ)する。
希薄化した建築設計事務所のガバナンスをどう取り戻すのか。
その方策となるのは、ライフスタイルの変化に合わせた新たな建築・都市の提案だ。特にコンパクトシティーについては、グローバル化によってヒト・カネ・情報が自由に動き回るようになった時代だからこそ、新たな拠点としてのニーズが高まっているとみる。
その上で「コンパクトシティー構想により都市や地域の課題に応えることで、産業構造や個人のライフスタイルにまで連動する仕組みと意識の変革につながる。経済、社会、コミュニティーといった問題を背負いフィロソフィーを持って社会に提案するのが建築設計事務所の役割だ」と見据える。
そのためには、設計界にはこれまで以上に自らの設計の質を高める「自覚と研鑽(さん)」が問われているという。「建築設計事務所がただ仕事を受けるだけならばフィロソフィーはいらないだろう。しかし、建築家の集団として社会に意味のあるメッセージを伝えるならばフィロソフィーが不可欠だ」と力説する。
2015年9月7日掲載
その他の記事
- 2020年5月13日
- 今、アテネ憲章に代わるもの―都市の形 – 多様性を包摂する社会で建築家は何を示せるか
- 2020年4月8日
- 都市の先見性と長期的変容を学ぶ – ビジョンと指針の不在が最大の問題
- 2020年3月11日
- 建築が評価されていない – 形態を持たない建築
- 2020年2月12日
- 多元的社会を生きる
- 2019年5月21日
- 速さの変革が時代を変える
- 2019年4月1日
- 新入社員に贈る言葉「グローバル社会に生きる」
- 2019年2月12日
- 続・中国の事情から何を読み取るか
- 2018年11月13日
- 速さの時代に生きる意味とは
- 2018年8月22日
- 中国の事情から何を読み取るか(下)
- 2018年8月7日
- 中国の事情から何を読み取るか(上)
- 2018年3月20日
- 現在という時代を考える
- 2018年1月5日
- 2018年年頭訓示 「共鳴得る構想力が必要・構想力が重要に」
- 2017年10月31日
- 技術革新の変化と未来
- 2017年8月7日
- シリーズ 建築設計事務所「新たな地平を開く」
- 2017年8月2日
- 人体の免疫システムと建築の防御
- 2017年6月13日
- 住宅の高層化と都市景観
- 2017年4月4日
- 新入社員に贈る言葉「夢のある未来を」
- 2017年2月28日
- 近代建築と、現在という状況
- 2017年1月10日
- ポピュリズムと現代(建築)の相克
- 2017年1月5日
- 2017年年頭訓示
- 2016年11月10日
- 省エネの独走
- 2016年9月26日
- シリーズ 建築設計事務所「変革に向き合う」
- 2016年8月31日
- 場所を喪失した現代社会
- 2016年5月30日
- 都市型農業は革新する
- 2016年5月9日
- 都市型農業のすすめ
- 2016年4月4日
- 新入社員に贈る言葉「建築で何を問うか、個の力を発揮せよ」
- 2016年2月26日
- 都市農業への期待
- 2016年1月22日
- 農業の未来と都市化
- 2016年1月5日
- 2016年年頭訓示「責任の強い自覚を・建築家奮起の一年」
- 2015年11月20日
- 〈社会・自由・建築〉を考える
- 2015年9月7日
- シリーズ 建築設計事務所「問われる真価」
- 2015年5月29日
- 天井問題から建築を考える
- 2015年4月2日
- 新入社員に贈る言葉「時代の変化の節目を捉えよ」
- 2015年1月9日
- 設計事務所トップの視線2015「建築を変えるのも建築でしかない」
- 2014年7月29日
- シリーズ 建築設計事務所「変革への胎動」
- 2014年4月3日
- 女性の役割と発想
- 2014年4月2日
- 新入社員に贈る言葉「歴史と経験に学べ」
- 2014年2月6日
- 美しい日本の国土景観を未来に残そう
- 2014年1月16日
- 設計事務所トップの視線2014「新たなカタチの総合性」が必要
- 2013年7月24日
- シリーズ 建築設計事務所「明日を読む」
- 2013年7月24日
- シリーズ 建築設計事務所「国のかたちを考える」
- 2013年4月18日
- 自然と自然体で向かい合う
- 2013年4月2日
- 新入社員への訓示「新たな文脈を見出し、創造的使命を果たそう」
- 2013年1月24日
- 2013年の新たな都市像を描く
- 2013年1月18日
- 設計事務所トップの視線2013 豊かさ体感できる「コンパクトシティー」構築を
- 2012年8月2日
- 心つなぐコンパクト・シティーの構築
- 2012年6月29日
- 女性の就業環境創出は都市環境を変える
- 2012年5月17日
- 「二住宅所有論」を提起する
- 2012年4月3日
- 新しく入社された皆さん、心から歓迎したいと思います。
- 2012年1月19日
- 設計事務所トップの視線2012「環境・快適とBIMで新たな切り口」
- 2011年11月17日
- リアリティー取り戻すべき
- 2011年10月14日
- 国家ビジョンなくして東日本の将来なし
- 2011年9月30日
- 生活居住地は高台か、平地かを考える
- 2011年8月22日
- 大震災が鳴らす警鐘
- 2011年7月27日
- これからの高性能ビルと都市的開発のあり方を考える
- 2011年6月27日
- 現代社会が要請する復興の姿
- 2011年5月16日
- 国土計画と地域計画への提言
- 2011年4月21日
- 大震災の教訓と餞
- 2011年4月1日
- 巨大災害、我々の使命
- 2011年3月22日
- 巨大地震が突きつけるもの
- 2011年3月16日
- このたびの震災について