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社長 細田雅春より

代表取締役社長

弊社代表取締役社長・細田雅春の取材記事や発表した文章などを随時掲載しております。

現在という時代を考える
資源と技術革新による工業化から操作能力の差異による社会の出現

現在、すなわちわれわれのいる時代とはどういう時代なのか考える時がある。

もちろん、現在といういまに身を置いている自分が極めて主観的に思い考えるだけで、そこに客観的視野を持ち込むことは困難だ。しかし多くの歴史的な知見を導入することによって大局的視点を持てば、視野を広げることはできる。とりわけ、爆発的経済成長を成し遂げた西欧の出来事には注視する必要がある。紀後半から始まったコンピューターによるネット社会の出現、そして、現在のコンピューターの能力をはるかに凌駕する超高速処理が可能な「量子コンピューター」が実現すれば、あらゆる状況の最適化がAI(人工知能)を駆使することにより可能となり、人間の能力をはるかに超えることになるという。ここに技術の進歩の飛躍的広がりを見ることはできるが、では技術の進化は万能なのか、という問いも必然的に生まれる。

最少労力で富を蓄積「大航海時代」に原点

15~16世紀までの、いわゆる西洋の「大航海時代」は多くの意味で、現代を照射するには格好の時代背景を備えている。西洋は、船という手段でグローバルな世界を手に入れた。その背景には、国家の威信をかけた造船技術や航海術、そして食料の保存技術などの技術的革新があったが、そうしたアナログなグローバル社会の到来という歴史の検証を通じて現在の経済法則=富の蓄積の原点が見い出せる。

ポルトガルやスペインが世界に先駆けて、海外の植民地を開拓し、さまざまな新しい資源と安い労働力を得て、巨大な富を蓄積してきた歴史である。スペインのフェルナンド5世の妻イザベルの命を受けて、大西洋を乗り越えて、コロンブスが1498年にアメリカ大陸に到達したことはよく知られているところである。続いて、英国やフランス、そしてオランダなどが世界の植民地化に乗り出した。

16世紀初頭から始まった宗教改革、またイタリアで花開いた文芸復興、いわゆるルネッサンスもそうした海外植民地の資源によってもたらされた巨大な富の結果であり、資本の投資という最小の労力で最大の利潤を生みだす仕組みがあったのである。

無限の成長夢見るも 制御困難な世界到来

極論すれば、それが西洋の歴史上の大きな節目であった。その後、英国で起こった産業革命などを経て、2つの世界大戦以降の時代に至るまでの変化が大雑把に見て近代化の歩みと言える。そして次への潮流は、20世紀後半から21世紀初頭に至るまでの「現在」という状況である。

20世紀後半には、米国を筆頭とする西欧諸国、そして日本の経済的成長は過去のスケールを遥かに超えて、爆発的進化を遂げることになった。その原動力は、石油という資源の無制限ともいえる消費を背景とするさまざまな産業だ。そしてその産業の発展を支えてきたのがまさに工業化社会の象徴ともいえる爆発的な技術革新の進歩である。それは、画一的な大量生産による生産性の向上という成果が示す歴史でもある。

進歩という言葉によって、世界は無限の成長を夢見るようになった。それ以降、21世紀初頭に至るまでの現在では、コンピュータの進化によって、世界がネット空間にまで広がり、グローバル社会の出現を促した。その結果、われわれが未体験の世界、すなわち、ヒト、モノ、カネが国境を自由に越え、国という概念すら危うくなという世界が到来したのである。

ヒト、モノ、カネは全て情報という姿でコンピュータに取り込まれ、バーチャルなウェブ空間の中で多くが動くことになる。2008年のリーマン・ショックは21世紀最大の金融危機として、影響が一気に世界を駆け巡ったことは記憶に新しい。この事件は、もはや誰も、こうした複雑なバーチャルな空間を容易にコントロールすることはできなくなったことを意味する。

拡大と破綻 振幅極端 未曾有の課題が山積

そして、このような底知れぬ、かつ未曾有の経済的成長は、極めて大きな拡大と破綻という極端な振幅を記録してきた。例えば1973年の世界的な不況、あるいは80年代の日本でのバブル景気である。ここに至って、世界は極めて不安定な状況を内在させるという、これもまた過去にはない経験を背負うことになったのである。

そうした不安定性からの脱却に向け、世界的に環境保護の政策やサービス業などへの転換が試みられているが、モノづくり時代に培われた生産性向上という価値観では捉えることができない問題であり、今日に至るまで解決に苦慮している。

先進国の人口問題もそれに拍車をかけている。社会保障や格差問題など、未曽有の課題が山積し始めたことも、極めて今日的な現象である。さらに日本政府は、1980年になって、西欧諸国の全体よりも多くの国債を発行し、政府支出の30%を賄うという事態に突入。実体経済とはかけ離れた状況を生み出すことになり、現在では1300兆円という膨大な債務を抱え現在に至っている。

これらは、アメリカのエコノミスト、マルク・レヴィンソンの著書『例外時代』にも指摘されている、現代の特異性である。その意味で、彼が最後に引用している、サミュエルソンの言葉は印象的である。「20世紀の第3四半期は、経済発展の黄金時代だった。この時代は、あらゆる合理的な期待を上回っていた。そして、同じような時代が近いうちに再び訪れることは、まずないだろう」という言葉だ。

デジタル技術に軸足 現代を検証し次代に

16世紀の富の蓄積の構造は、最小の資本の投資で、最大の利益・利潤をもたらすという技術的変換によるものであった。そうした変換のあり方は、20世紀前半に至るまで、大きく変化することはなかった。ある意味では技術が資本を拡大していたのである。

しかしながら、20世紀後半から、その様相は大きく変わり始めた。工業化時代に培われたハードな技術ではなく、バーチャル空間を自在に操ることのできる「操作=マニピュレーション」を精緻化するデジタルな技術へと軸足が変わり始めているのである。工業化社会のように大量な人的労力を投入することなく、操作という極めてわずかな労力で莫大な結果、すなわち利益を上げることが可能になるのだ。そしてこのバーチャルな空間に飛び交う仮想通貨のように、単にコンピュータ操作によって利益を生む世界がわれわれの未来に何をもたらそうとしているのか。

15~16世紀の歴史的変革期と20世紀後半から現在に至る変革とを比較して、次の時代を予測することは果たしてできるのか。レヴィンソンの『例外時代』を読んで、現代という時代の特殊性について、多くを学ぶことができるだろう。その成果を、現代の検証と共に、次世代へつなぐこと。それこそがわれわれの仕事である。

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